結局、著作権の保護期間は何年がいいの? ~オーディオブックで実証研究した結果~(前編)

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こんにちは。ヨネツキと申します。

先日このブログに書いた、「憲法記念日に、「出版の自由」を考える」という記事が一部で話題になったらしく、なにか他にも書けといわれました。

うーん、この憲法記念日の記事で話題になったのは、本文と関係なくこちらをガン見してる女性の写真のような気もしますが・・・

まあとにかく、せっかくなので、出版やコンテンツ業界にかかわる人には避けて通れない、最近の大トピックについて書いてみましょう。



1.TPPで、「著作権の保護期間」が話題ですね


ニュースを見てる方はご存じかと思いますが、5月に、TPPの協議に関連して「日本でも著作権の保護期間が著作者の死後70年になるの?」という話題がでましたね。

新聞のなかには「70年で交渉中」なんて書いてるものもあって、ドキッとした方も多いかと思います。

ただ、著作権の保護期間の問題は、今にはじまった話ではありません。ふりかえると、日本でも2006年ころからたびたび話題になってきました。作家、権利者団体や法律家のあいだで、いろいろな議論が交わされてきたところです。


しかし、結局のところ、50年と70年の、どちらがいいのでしょう?
何が決め手になるのでしょうか?
みなさんはこの問題について、じっくり考えてみたことはありますか?

インターネットで誰でもすぐに情報発信できる世の中になり、「著作権」は一部の作家さんのものではなくなりました。著作権は今や、みなさんにもしっかり関わる問題です。

この機会に、ひとつ考えてみませんか?


2.オーディオブックを題材にした論文がある!


今日は、この問題を考えるヒントになるような、面白い文献をひとつご紹介しましょう。

著作権の保護期間について、アメリカでは、なんと「オーディオブック」を使って分析した論文があるのです。

それは、Christopher J.Buccafusco助教授と、Paul J.Heald教授の手による、2012年の論文、

Do Bad Things Happen When Works Enter the Public Domain? : Empirical Tests of Copyright Term Extention (作品がパブリック・ドメインになったら悪いことが起こるのか? : 著作権保護期間の延長に関する実証研究)」です。


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おそらく、まだ日本ではきちんと翻訳されていない論文なのですが(神戸大学の島並良教授が過去にツイッターで短く触れられたくらいでしょうか)、著作権の保護期間を考えるにあたってヒントになることがいろいろ議論されてますので、少し詳しくご紹介しますね。

(なお、この記事ではわかりやすさを優先して、学術論文などで使われる用語よりも、かなりラフな訳語をつかっています。ご了承ください。)


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3.延長賛成グループが述べる3つの理由


まず、論文全体の流れからみておきましょう。

この論文は、はじめに、著作権の保護期間の延長に賛成するグループの主張を3つ紹介します。そのうえで、これらの主張が正しいのか確かめるために、オーディオブックの作品数データや、ユーザー評価などの数字をていねいに分析していきます。

結論としては、賛成グループの主張にはぜんぜん統計的な根拠がない!といって容赦なくすべて叩く、という段取りです。

そこでやり玉にあげられている、賛成グループの主張はこちらです。


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★【主張その1】

著作権の保護期間が終わったら、出版社などの団体が熱心に宣伝などをしなくなるため、作品が十分に利用されなくなる(be underused)のではないか。

★【主張その2】

(1とは反対の方向性ですが、)誰でも作品を自由に利用できるようになるので、作品が濫用されてしまう(be overused)のではないか。

★【主張その3】

さらに、著作権者のコントロールがきかなくなるので、作品が低レベルな形で利用されてしまう(be tarnished)のではないか。


・・・なるほど。
これだけ見ると、どの主張もそれなりにツッコミどころがあるような気が。


4.ためしにツッコミを入れてみる


みなさんもお気づきのとおり、【その1(利用されない)】と【その2(濫用される)】の主張については、

「たしかに著作権が切れたほうが利用はしやすくなるけど、結局、魅力のない作品はそこまで利用されないだろうし、作品ごとに変わってくるんじゃないの?」と思ってしまいます。


そして【その3(低レベルな利用)】の主張については、

「作品が高いレベルで利用されるかどうかは、結局、利用する業者のレベル次第であって、著作権が切れたからいきなり低レベルで利用されるというのは言いすぎでは?」という身もフタもない結論に・・・


ただ、こんなふうに私が「思った」としても、それも一種の印象論です。
「作品の利用が減るんじゃないか!」、「いや減らないだろう・・」とだけ言いあっても、おそらく不毛な水掛け論に終わってしまいます。


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そこで、今回ご紹介する論文では、「実証研究」の方法をつかっています。

実証研究とは、辞書によると、「直接的な観察や経験によって知識を得る方法」とのこと・・。なにやら難しそうですが、要するに、「根拠になる数字データを出すやり方」です。関西弁でいうと「正味、ナンボやねん」というやつですね。

著作権は、ジャンルとしては経済学ではなく、法学の分野とされていますが、ここ20年ほどのあいだに、法学の世界でも実証研究のように、経済学を取りいれた分析が進みました。

それでは、今回ご紹介する論文では、オーディオブックを使ってどのような数字データを導いたのでしょうか・・・?


後編につづく・・)


この記事のライター
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ヨネツキ
六法をめくったり、契約書をいじったりする人。
雨がふると奥田民生さんの「コーヒー」を思いだす。
法律ネタの記事など担当。



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