あなたも無関係ではいられない! Yahoo!のプライバシーポリシー改定でどんな影響があるのか

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週末『アナと雪の女王』を観に行って、不覚にも泣いてしまったヒノハラです。
普段ひねくれたミステリばかり読んでいるので、王道一直線の物語がむしろ新鮮でした。

今までディズニーとは縁のない人生を送ってきた自分ですが、
これを機にTSUTAYAで『アナ雪』みたいな映画を色々借りてみようと決心しました。
オススメ作品、絶賛募集中です!

さて、そんな話にも少し関わってきそうなのが、最近話題になっているYahoo!のプライバシーポリシー改定です。

Yahoo!のプライバシーポリシー改定……その内容は?

ヤフー株式会社は6月2日、プライバシーポリシーを大きく改定しました。

で、結局何が変わるの? そもそも何のための改定なの? と、
いまいちわからないままスルーしてしまった方もいるかもしれません。

でも、ちょっと待ってください!

今回の改定、ヤフーやTカードのサービスを使っている人はもちろん、Webサービスを使う人なら誰もが知っておきたい、とっても重要なお話が背景にあるのです。

この度、Yahooとカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)は、ユーザーの情報を相互に提供することを明らかにしました。

YahooとCCCは昨年、お互いのポイント制度をTポイント制度の一つにまとめて、Tポイント・サービスを利用するためのIDをYahoo! JAPAN IDに統合しました。

それに続く今回のプライバシーポリシー改定は、Web閲覧履歴や購買した商品・サービスなどの「利用者の情報」を二つの会社で共有することを可能にします。

でも、「単なる情報交換」などでは決してありません!

今回のプライバシーポリシー改定。その背景には、One to Oneマーケティングに対する注目の高まりがあるのです。

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One to Oneマーケティングって何?

One to Oneマーケティングとは、消費者一人ひとりの趣味や好きなものの傾向にあわせて、個別のニーズにカスタマイズしたマーケティング手法のことを言います。

例えば、ショッピングサイトで見かけてちょっと気になっていたアイテムが、別のWebサイトを見ている時に広告で出てきたりしたことはありませんか?

実はこれも、One to Oneマーケティングの一例です。

これはユーザーが直接興味を示したものを広告するケースですが、
One to Oneマーケティングの手法はそれだけに留まりません。

消費や行動の傾向が似ているユーザーのデータを大量に分析することで、
ユーザーの潜在的な需要を明らかにすることもできます。

Amazonなどで物を購入したときに
「このアイテムにも興味がありませんか?」
とおすすめ商品が出てくることがありますよね。

「似通った購買行動」をしているユーザーのデータを分析することで、そこからおすすめ商品を導き出しているのです。

このような手法で提示された広告は、通常の広告などよりも興味を持ってもらえる可能性が大きいことから、費用対効果が高いとされています。

こうしたOne to Oneマーケティングには、データサイエンスの力が欠かせません

米国の有名なスーパーマーケットチェーンで購買データを分析したところ
「紙おむつを購入する人は、同時にビールを買うことが多い」
ということが明らかになった、という話があります。

紙おむつとビールを一緒に並べるという発想には、いくら実物を目の前にしていても辿り着くことはないでしょう。

これは、人の直感に頼らず、消費者の購買データを機械的に分析することで、初めて明らかになった傾向だと言えます。

 

ビッグデータブームがゴミ山を金脈に変えた!

このOne to Oneマーケティングは、近年急激に注目が集まっています。

これまでも、消費者の購買データなどはさまざまな企業が保有していました。
ところが、それを用いて「紙おむつとビール」のような関係を取り出すところまでは、どこもそれほど進んでいなかったのです。

それが、ビッグデータのブームに伴い、
「あまりに複雑で一見何がどうなっているのかわからないデータから、本当に役に立つ情報だけを掘り当てるツール」
が一般に広まったことで状況は一変しました。


イメージしてください。

たくさんの宝が埋まった鉱山があっても、そこに宝があることを知らず、しかも素手で掘るしかなければ、それはただのゴミ山ですよね。これまでの消費者データは、一部を除いてまさにそのようなゴミ山状態になっていました。

ところが、ビッグデータブームは、
そうした使い道のない消費者のデータが「金脈」であることを明らかにしました

その結果、様々な業界で、「いち早く金脈を掘り起こそう」というゴールドラッシュが起こっているのです。

データの発掘手法が広まってしまえば、より多くの消費者データを保有している会社が強みを持ってきます。
「鉱山」のサイズが大きければ大きいほど、正確で多様なマーケティングが可能になるからです。

となれば、

「自分たちの持っている消費者データと、他の会社の持っているデータを一緒にしてしまおう!」

という戦略をとる会社が出てくるのは、当然ですよね。

それが、今回のYahooとCCCでした。

今回のYahooのプライバシーポリシーの改定に基づけば、CCCとYahooが、それぞれ保有している顧客の商品購入履歴やWeb閲覧利益といったデータを相互に提供しあうことになります。

この背景には、両者が持っている「鉱山」を一緒にして、より効率的に宝を発掘しようという目論見が見えます。

いくら手を組んでも、違う業界ならお互いに邪魔をしあうことはありません。

「金を掘る人」と「ダイヤモンドを掘る人」が同じ山で発掘をしていても、二人の取り分が減ることはないのと同じです。

 

結局、ユーザーにとって良いの? 悪いの?

さて、どうやら今回のプライバシーポリシー改定は、YahooとCCCに大きな利益をもたらしそうだということが明らかになってきました。

でも、ユーザーとしては会社の利益なんて関係ありません。

大切なのは結局、「わたしたちにとって、良いのか悪いのか」ですよね。

今回のプライバシーポリシーの改定で、真っ先に気になるのは、「そんな簡単に自分たちの情報がやりとりされていいの?」という点でしょう。

実際、このように自分と関係した情報が会社間で共有されることに、ネット上ではプライバシー侵害を懸念する声も上がっています。

データを使用する際には個人は特定できないような仕組みが使われ、YahooとCCCでの情報のやりとりを希望しないユーザーはオプトアウト(情情報連携の停止)もできるとのことですが、閲覧したWEBページの履歴などが自分の手を離れたところでやりとりされるのを不安に思う人もいるでしょう。

2015年初頭に提出が計画されている個人情報保護法の改正法案では、個人情報のデータを第三者に提供する際に必要な本人の同意について、同意を必要としないような新たな例外を定めるそうです。

こうした法改正の動きともあわせて、今回のケースには今後も注目が集まりそうです。

とはいえ、もちろん不安なことばかりではありません。

今回のプライバシーポリシー改定は、ユーザーにも大きなメリットをもたらしてくれる可能性があります。

よりユーザーの好みを反映したレコメンドサービスなどが登場してこれば、日々接する情報やサービスが自分に合わせてカスタマイズされていくことになります。

今回の改定を機に、「痒いところにきちんと手の届くサービス」や、「自分が求めるものに最短でたどり着けるサービス」がどんどん実現されていくかもしれません。

今後の動向に注目!

今回のようなお話は、決してYahoo!とCCCの一件に限るものではありません。
「鉱山」を拡大して、よりユーザーのニーズに寄り添ったサービスを生み出そうという風潮は、今後さらに高まっていくでしょう。

ビッグデータやOne to Oneマーケティングなんて単語は遠い世界の話……と思っていた方はいませんか。
でも、今回の記事で書いてきた通り、一ユーザーも無関係ではいられない時代がすぐ側に来ているのです。

プライバシーに対する不安を解消しつつ、「ユーザーにとって良い」サービスを実現できるかどうか。
Yahoo!とCCCの新たな戦略が、One to Oneマーケティングの今後の流れを左右するかもしれません。

これからしばらく、目を離せないことになりそうです。

この記事のライター
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ヒノハラ
ミステリ大好きなインターン生。
最近イチオシの一冊は米澤穂信さんの『満願』。
まもなくやってくる梅雨に備えて、紙の本をどのように湿気から守るか頭を悩ませる毎日です。
運営 株式会社オトバンク

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担当者 佐伯