仮想現実の鍵は“音”にあった! ~話題の技術「Oculus Rift」を体験してみた



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こんにちは、ヒノハラです!
 
突然ですがみなさん、
現実と仮想現実の区別、つきますか?
 
何をバカなことを……と言われそうですが、
もしかしたら、近い将来、
映画「マトリックス」のように、
現実と仮想現実は、区別できなくなるかもしれません。
 
そして、その鍵は、“音”にあるのかもしれないのです。
 

今話題のHMDって一体何?


 
一昔前まで流行っていた「バーチャルリアリティー」という言葉。
最近、あまり聞かなくなりましたね。
でも、確かにテクノロジーは進歩しているのです!
 
特に最近話題になっているのが、HMDという技術
HMDは、ヘッドマウントディスプレイ(Head Mounted Display)の略称です。
ざっくり言ってしまえば、頭に装着するディスプレイのことですね。


簡単にご説明すると、
ゴーグルのようなものを被ると視界が映像で埋め尽くされて、
頭を動かすとそれに合わせて映像も動く、
つまり、
「映像の中の世界を、現実のように見渡せる」
未来感あふれるデバイスなのです。
2014年は、HMD元年とも言われており、
これから加速的に注目が高まる技術なのは間違いありません。

 
さて、そんな数あるHMDの中でも有名なのが、Oculus Riftです。
これはOculus VR社がつくっているHMDで、
ポイントは何といっても価格のお手頃さ。
個人でも3~4万円出せば開発キットが購入できてしまいます。
今年3月、Facebook社がOculus VR社を20億ドルで買収したことでも話題になりました。

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(画像引用:http://www.oculusvr.com/rift/
 
……でも、実際このOculus Rift、
映像世界に入り込めるといっても、いったいどの程度のリアリティがあるのでしょう?
いくら宣伝されても、こればかりは自分で体験してみないとわかりません。
そこで、私ヒノハラ、
このOculus Riftを体験してみました!
 

怖すぎて30秒でリタイアするホラーゲーム


 
知り合いがこのOculusを購入したというので、
早速頼んで、体験させてもらいました。
 
Oculus Riftには、既にさまざまなコンテンツが発表されているのですが、
まず私が体験したのは、「ジェットコースター」の映像。
私は絶叫マシーンが大の苦手なのですが、
果たして一体どうなるのか……?

 
ゴーグルのような形のOculus Riftを装着すると、
目の前に広がるのは、CGで作られたコースターのレーン。
ガタゴトと音を立てながらレーンの上を昇っていきます。
CG自体は画素数が荒く、現実と間違うようなものではないのですが、
この「ガタゴト」という音だけはやたらとリアルでした。
そして、頂上につくと……そのまま真っ逆さまに急降下!
  
正直に告白します。
思わず声を上げて、前のめりになってしまいました。
本当は落ちているわけじゃないのに、
あの浮遊感を、まさにそのまま体感したのです。
  
ちなみに、自分が見たのと同じジェットコースターを、
Oculus Riftで体験しているときに背中を押したら……こうなります。

これを見て頂くだけでも、どれほどのリアリティがあるか伝わると思います。
 
ちなみにその後、同じレーンを三周ほどジェットコースターで駆け抜けたのですが、
恐怖を感じたのは最初だけで、
二度目、三度目は、周りの景色を見渡す(そう、頭を動かして見渡せるのです!)余裕が出てきました。
これは、「本当の落下ではない」と学習したからなのか、
それとも、ジェットコースターそのものの感覚に慣れたのか……?

 

続けて私が体験したのは、
知り合いイチオシのホラーゲーム
曰く、「オレは30秒でギブアップした」とのこと。
  
いやいや、誇張しすぎでしょとツッコミながら、
早速私も体験してみることに。

 
……ごめんなさい即ギブアップでした

 
暗い部屋をライトで照らしながら探索するだけのゲームなのですが、
開始からずっと不穏な音が流れているんです。
CGはしょぼい(失礼!)のに、音がやたらと臨場感を盛り上げていて、
いつ何が出てくるのか、怖すぎて動けなくなってしまいます。
  
それでも何とか勇気を振り絞って前に進むと、
聞こえてくるすすり泣きの声……。
結局、ゾンビ一体にすら遭遇しないまま、部屋から逃げてしまいました。

 
……この二つのコンテンツを体験してみて私が実感したのは、
「リアリティの鍵は音にある」
ということです。
 
ジェットコースターの動くガタガタという音、
誰もいない廊下に響く足音や突如聞こえるすすり泣き。
 
こうした「音」だけで、
大した画素数でもないディスプレイや、現実離れしたCGでも、
完全に没頭してしまうほどのリアリティを感じるのです。
これは思わぬ大発見でした。
 

このままいけば、現実と仮想現実の境界がなくなるのも遠い未来の話ではない……?
そう思った私は、気になって調べてみました。
すると……何と、
「現実」と「仮想現実」の区別をつかなくさせることが、
HMDで既に実現しているというのです!
しかも、そこでも鍵になってくるのは“音”でした。
 

過去と現実の区別がつかなくなる!?


 
HMDの技術を応用すると、
過去と現実の区別がつかなくなることだってあり得る――!?

 
そんなSFのような研究をしているのが、
理化学研究所の社会神経科学者・藤井直敬さん。
 
藤井さんが提唱する<SRシステム>は、
HMDで「過去と現実の境界を無くす」試みです。

 
……と言われても、ピンときませんよね。
簡単に原理をご説明します。

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(画像引用:http://mirage.grinder-man.com/about/

「エイリアンヘッド」と名付けられたカッコいいHMDを被ると、
目の前に、リアルタイムの部屋の映像が広がります。
その後、部屋を色々見渡してもらうのですが、
ここで、頭を動かしている時に、
HMDに映る映像を「現在」から「同じ部屋で撮影した過去の映像」に切り替えます。
そうすると、HMDを被っている人は、
自分でも気づかないままに「過去の世界」にいることになります。
一度、現実と過去をすり替えてしまえば、
そこはもう何でもありの世界です。

 
椅子から立ち上がって歩いてきた人がいきなり消えたと思ったら、
反対側の部屋の入り口に出現したり。
その映像すら現実ではなくて、
また一瞬で消えて、気づけば目の前の椅子に戻っていたり。

 
文字で書いてもあまり伝わらないので、
こちらの動画を御覧ください。
 

 
「現実」と「過去」の境界がなくなったとき、人はどのような反応をするのか?
ぜひ、動画でご確認頂きたいと思います。
 

代替現実の衝撃 


 
藤井さんは、自身の手がけたシステムについて、
「代替現実」
という呼び方をしています。
  
「仮想現実」は、CGなどの仮想を現実に近づける技術。
「代替現実」は、その逆で、体験者の「現実」そのものを操作するものです。

そんな「代替現実」を研究する藤井さんが、ご自身の著書
『拡張する脳』(藤井直敬/著、新潮社/刊)
の中で挙げているエピソードが印象的です。

 
SRシステムは、ほとんどの人が「今が現実かどうか見破るのを途中で諦める」そうなのですが、
中には「完璧に見破った」という人もいます。  

そんな人は、
「足音で過去と現在を見分けている」
とのこと。
 
それに対して、藤井さんは言います。
足音も作り込んである架空の情報だから、
それは過去のものでも、現在のものでもないと。

すなわち、「見破った」と思い込んでしまった人こそ、
「誰よりも現実と非現実の区別がついていない」のかもしれません。

 
でも、このエピソードの本当の重要な点は、
「現実と代替現実の区別をつける」ためには、
「音」くらいしか手がかりがない……ということです。
  
逆に言えば、その音さえ作り込めれば、
「現実と非現実の境目」
を無くすことだって、できるのかもしれません。
 

おわりに


最初は、Oculus Riftへの素朴な興味からだったのですが、調べていくうちに、
「現実と非現実の境目がなくなる日」
は決して遠くはないなと実感しました。
「音」がリアリティの鍵となるというのも、納得の行く話です。
思えば、昔流行った「かまいたちの夜」などのサウンドノベルも、音を使うことで臨場感を高めていました。
音や映像の質感が高まって、全く現実と区別のつかない仮想現実ができたら……!?
想像してみると、少し恐ろしくもありますね、


今はまだ、実験室や一部の環境でのみ体験できる技術ですが、
これがスマートフォンのように身近なものになる日はすぐそこまで来ています。
HMDの歴史は、まだ始まったばかりです。これからの展開に目が離せません。
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この記事のライター
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ヒノハラ
ミステリとペンギンが好きな人。
最近は八景島シーパラダイスに行くのがささやかな望み。でも絶対ジェットコースターには乗りません。
 
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担当者 佐伯