【出版社へ行こう!】ディスカヴァー・トゥエンティワンで干場社長のお話を聞いてきた(インタビュー編)

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広報のナカガワです。突然はじまりましたこちらの企画「出版社へ行こう!」
前回の記事ではディスカヴァー・トゥエンティワンのオフィスを中心にご紹介しました。

今回は、干場弓子社長へのインタビューを中心にお送りします!

―干場さん、本日はよろしくお願いします!
さっそくですが、御社の創業の経緯を教えていただけますか?

 1983年頃のことになりますが、現在コーチをやっている伊藤守が「出版社を持ちたい」と言っていたんです。伊藤の会社の社員が私の中学からの友人で、たまに一緒に飲んだりしていたんですよね、今でいうスタートアップみたいな感じで。当時私が出版社でファッション誌の編集をしてたこともあり、だったら一緒に出版社やってくれない、みたいな。しばらく考えて、決めたのが84年くらい。それで有限会社から資本金10万円くらいで立ち上げました。普通出版社って、営業と編集がセットで立ち上げることが多いんですね。なので編集者は書籍づくりや販売等に関する知見を持っているし、著者を持っている、営業は取次にコネクションを持っている。その上で独立する。ところが雑誌の編集と書籍って全然違うんですよ。特に私はいち編集だったので、そんなの知らないわけですよ。編集技術も違うし、いろんな発想が違う。むしろファッション業界の方が詳しい。

 社名は21世紀を創る会社ということで、伊藤がその場で決めました。「21世紀を創る会社を一緒にやろうよ!」と盛り上がって。最初は社員も一人でした。21世紀を拓く会社なので、出版社とは言っていませんでした。コーチングは、人に直接働きかける仕事。一方で、広い意味でのメディアというのはなにかを介して働きかけるもの。そういうものであればなんでもいい。そんな感じで5年くらい、出版とは離れたこともやっていました。そんな中、そろそろ本でも出すかということで、アメリカから買ってきた本を参考に1992年に『あなたならどうする100の?(クエスチョン) 自分を哲学する、究極の質問』という本を出しました。「船が難破しました。助けられるのは1人だけです。誰を助けますか?」みたいな感じのもの。オリジナルの問題を作っていました。

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―なるほど、そこから書籍の出版が始まったんですね。

 最初はCDサイズの本を出していましたが、それだけじゃやっていけないということで翻訳、自己啓発を始めました。去年我が社で一番売れた『うまくいってる人の考え方』というのはごく初期の作品です。初の翻訳書である『アインシュタイン150の言葉』は今でも売れてる。32万部くらいかな。その次の『うまくいってる人の考え方』が、55万部くらい。実は、勝間和代さんの本が出る前から20万部以上の本っていくつかあったんです。でも、翻訳書の自己啓発って著者に取材もできないから、『自分を磨く方法』とか『天使になった男』とか、みんな30万部くらい売れてるんですけどそんなに目立たないんですよね。だから勝間さんの前から20万部以上売れてるものはありました。全部翻訳でしたが。

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 なぜ翻訳書にしたかというと、コネクションがなかったから。ビジネス書が流行るようになったのって勝間さんくらいで、それまではビジネス書ブームというものがなかったから、大経営者のものくらいしかありませんでした。翻訳書で実績を積んで、こういうものを出してるから、ぜひあなたもということで日本人に依頼し始めるようになったんです。

 ちょうどその頃、翻訳書で、“Secrets of Six-Figure Women”という本があったんですね。女性のキャリアの本で、女性が日本円にして月収100万円を稼ぐために、という本で。というのも当時(2004年頃)のアメリカって、今の日本に近い感じがあったんです。活躍している女性がいる一方、マジョリティの女性たちは必要以上に自信がない。出世のチャンスがあっても身を引いちゃったり。上に行く人たちは元々そういう性格の人だけど、普通の人ってそうなりがちじゃない。そういう女性を応援する本だったんです。

 そのタイトルを考えていたときに「ミリオネーゼ」というのを考えたの。タイトル考えようと思って考えて、お正月にみのもんたの「ミリオネア」を見ていて「これだ!」って(笑)当時シロガネーゼという言葉もありましたし。それでやっぱり、これからの女性もただ出世するだけではダメだし、やっぱり結婚も恋もおしゃれもして、なおかつやっぱり年収1000万円くらい稼がないと。全てを手に入れていいんだよというメッセージを伝えたかったんです。それでミリオネーゼシリーズとして経沢香保子さんや佐々木かをりさんにお願いして、取材とかでも注目していただいて。それで次の著者を探していたときにGoogle検索で引っかかったのが勝間和代さんでした。

 そもそもミリオネーゼというのを考えたのは、うちの営業の提案で「女性ビジネス」というジャンルを作ろうとしていたからなんです。和田裕美さんのデビュー作がダイヤモンド社から出た時期で、その頃からビジネススキル書というのが出てき始めたんです。でも女性はビジネス書コーナーに行かないし、女性の著者というのも、営業系とか接客系とか銀座系というのはあったけれど、それくらいだった。

 imageそこで出てきたのが勝間さんです。時を同じくして、マッキンゼー出身の著者たちが出始めました。『世界一やさしい問題解決の授業』とかね。そういうのが一つの大きな流れとなりました。ちょうど書評家ブログやtwitterも出てきたので、全てを巻き込んでいましたね。無理なく続けられる 年収10倍アップ勉強法(オーディオブックはこちら)が聖幸さんという人のブログで紹介されたときに、一晩ですごく売れて、amazonで一位になるというのが何日も続いたことがありました。その頃営業が書店に行ったら、「女のビジネス書なんか」って言われたんですって。だから、女ってわからないように名前を小さくしたりもしました(笑)たった8年前くらいのことです。

―話は変わりますが、4月で創業30周年を迎えるそうですよね。これからの御社、ひいては出版業界はどうなっていくと考えていますか?

 ディスカヴァーに限らないんですが、これからの出版社は紙の本だけではやっていけない。今は情報と娯楽の両方が、本という形態が最も安かった時代ではなくなっています。日本は少子化もあるからさらにそうですが、少子化の問題がないヨーロッパでも全く同じことが起こっています。
 
 ドイツのフランクフルトブックフェアは政府も巻き込んで半官半民の団体としてやっています。先日の日本書籍出版協会主催の講演会でフランクフルト・ブックフェアの総裁のブース氏も言っていたけど、少なくとも短中期的に出版社に求められるのはコンテンツのインターナショナル化。彼はこう言っていました。一方ですごい地域密着型、一方ですごくインターナショナル、その両輪が必要だろうと。

 たしかに日本でも、地域についての本もありますよね。それは最初から本という言語に拘束され、地域に根づいたものではあるけれど、世界に届けられるようなコンテンツは最初から世界の読者を考えて作るべき。そうすれば少子化でも大丈夫。そういうのはずっと前からやりたかったんですが、ようやく3年前から外国の方を採用して、いろいろと模索しています。ニューヨークにペーパーカンパニーも作りました。版権は積極的に売っていて、その過程の中で、今は詳しく言えませんが中国の会社と新しい形のコラボレーションを考えていて、よりグローバルな方向に進もうと思っています。

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[実はこの棚の一番上にあるのは、全て海外向けに翻訳された書籍!日本のコンテンツが世界に輸出されていくのは嬉しいですね]

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 あと、弊社はまだ進んでいませんが、角川さんのようなコンテンツの360度展開。ヨーロッパなんかでも、進んでる若い会社に多いのですが、ゲーム会社を買収したり提携したり、映画会社を提携したりというのが行われています。中国は日本の50年間分を10年くらいでやっているから、出版ビジネスというのはもう儲からないと判断されている。その代わり出版社にすごい投資が入るんですよ。映画と直結して考える。新興国は、中国でも他の国でもそうだけど、すっごい映画ブームなんです。映画化にあたっては、出版社はロイヤリティーをもらうんじゃなくて最初から投資。実際弊社が『超訳 ニーチェの言葉』を売った出版社は、若い青年社長がうまくやって、次に訪問したときには大成功していました。


 もう一つ。限定したマーケットを対象としたプラットフォームビジネスは必要じゃないかと思っています。amazonとかGoogleみたいじゃないにせよ、提供するだけでなくプラットフォームを持つようにしないとだめですよ。角川がニコニコ動画をやっていたり、プラットフォームがコンテンツを作り出したりしていますよね。amazonも本を出そうとしてたり、映画やテレビも作るんですよね。

 これからというと、このような3つの方向を見据えた動きでしょうか。

―コンテンツの360度展開とありました。弊社はオーディオブックでもお世話になっていますが、オーディオブックについて期待していることはありますか?

 目を使えないところってあるじゃない、まつ毛エクステをしていたり(笑) ああいうときって退屈で、最近は疲れてるから寝ちゃうんだけど、そういう手も目も使えない時っていいだろうな~って。それとか満員電車でなにもできないときとか、その辺の使いかたを商品そのもので伝わるような打ち出し方を工夫すれば、もっと市場は広がるんじゃないかなと思います。

 それから、たとえばNHKのラジオ深夜便って、70歳以上を主なターゲットに200万人もリスナーがいるんですよね。そういう意味で、年を取ると目がきついので、ああいうラジオに近いような発想で高齢者層に届けられるといいのではないでしょうか。私も近眼だから、満員電車とかで最近本が読めなくなっていると感じます。

 少子化に伴い、本の主なターゲットとなる15歳から65歳は半減するわけですよ。だからどんどん市場が小さくなっていく可能性が高い。でもオーディオブックはいいのではないかと思っています。そのあたりのマーケティングも含めた売り方が重要ですね。朗読少女は画期的だったと思うので、ターゲットに合わせた商品作りを期待しています。

―干場さん、どうもありがとうございました!

お話を伺っていく中で感じたのは、ディスカヴァー社は常に時代の先を見据え、新しい価値を創造しようとしている、ということ。

前提知識がないままCDサイズの書籍を作ったように、常識にとらわれない発想から、次はどのようなDiscoverが生まれるのか・・・楽しみでなりません♡

※21世紀を切り拓く会社、ディスカヴァー・トゥエンティワン社のオーディオブックは、FeBeでお聴きいただけます。一覧はこちらから♪

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この記事のライター
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ナカガワ
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担当者 佐伯